2001人の狂宴

2001人の狂宴 [DVD]
カップルが多くてイライラするがどうせこいつらみんな殺されるんだしと思えば大目に見れる。H・G・ルイスの「2000人の狂人」のリメイク。オリジナルは大昔に見たような気がするがよく覚えていないが、「H・G・ルイスの作品としては偶発的な傑作」という評価だったような気がするので、本格的に比較してみるにはオリジナルを見直す必要があるが、一見した印象としてはオリジナルと基本的に同じ話とは思えないほど映画としての完成度は高く、映画にとって脚本と演出と俳優とはいかに大事なものであるか改めて思い知らされる事例の一つ。南北戦争当時のアメリカ南部の田舎町の雰囲気を見事に表現した美術(当然作っているほうも見ているほうも本物の南北戦争当時のアメリカ南部の田舎町を知っているわけではないので、あくまでイメージとして)はすばらしい。「キング・コング」や「ジェヴォーダンの獣」「ヴィドック」に匹敵すると個人的に思う。その陽気で楽しそうに見えたアメリカ南部の田舎町の雰囲気が、段々と不気味で得体の知れないものに見えてくる演出がすごい。
思ったほど残虐シーンのオンパレードというわけではなく、残虐シーンも冗談のようなものが大半なので思いのほか残酷な印象は受けない。殺しのテクニックも馬、密造ウイスキー、バーベキュー、鐘、粉引き小屋?(果汁絞り小屋?)、蹄鉄投げなど南部の田舎へのこだわりが感じられてほんとよく作ってるなあと。唯一、エイリアンみたいな歯でチンポを食いちぎる女性が謎。アメリカ人が見ればわかるのだろうか?歯列矯正器?南部といえばチン切り?オリジナルの有名な、釘を大量に打ち付けた樽の中に人を入れて坂から転がり落とすシーンがなかったのはちょっと残念。
冒頭、大学教授がバカ学生(主人公グループ)に「自分自身に対して敬意を払え」と説教する場面があるが、実はこのセリフが最後まで生きていて物語の隠しテーマのようになっているのがよく見るとわかる。生き残った主人公がロバート・イングランドの墓にペッと唾を吐くが、彼はそこで死者に対する敬意を見せれば(自分自身に対する敬意でもある)最後に死なずにすんだのではなかろうか?とか思わせる、寓話的側面もある映画。日本の民話とかでこういうのがあったような気もする。つうかどいつもこいつもバカばっかりなので殺されても全然気の毒に思えないし、バカどものバカな行動やありえない殺され方を見てゲラゲラ笑うだけでも十分に楽しめる。主人公一派(殺される側)以外の殺人村人連中やその他あまり関係ない人などのキャラもいちいち立っていて、バカや変人が好きな人ならきっとお気に入りのキャラが見つかるはずだ。個人的にはパンツ見せながら踊る激ミニメイド服(もどき)の女性とアルマジロ男が気に入った。「悪魔のいけにえ2」や「バーサーカー」にも雰囲気が似ているのであのへんが好きな人向けの映画かも。
これ系のホラーとしてはここ数年来では稀に見る傑作だとは思うが、逆にあまりに完成度が高すぎるのでオリジナルの持つ破壊力や発狂性を期待すると拍子抜けするかもしれない。ジャケット裏などから受ける印象よりは、普通の人が見ても大丈夫。むしろ「チャッキーの種」とか普通の人が見てどう思うかのほうが心配だ(笑)主人公がロバート・イングランドの剣を友達の生首で防御するシーンは名場面。「シン・シティ」と並ぶ、人間の生首を粗末にする映画だ。
爆笑度     ☆☆☆☆
バイオレンス度 ☆☆☆☆☆
発狂度     ☆☆☆☆
怪奇度     ☆☆☆☆
男泣き度    ☆☆☆
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