サイレントヒル

これは劇場公開当時特に見る気はなかったが、おれのフェイバリットムービーの一つである「ジェヴォーダンの獣」の人が撮っていると聞いて、じゃあ行かなきゃと思っていたがいつのまにか上映期間が終わっていた。
最近のホラーでは珍しく、見終わってなんだか嫌なものを見た感が感じられる秀作。原作のゲームはまったく知らないが、ハウスオブザデッドやデッドオアアライブの映画版と比べるとセガテクモがかわいそうになる。今後ゲームの映画化作品の場合、監督は全部クリストフ・ガンズにまかせるべきだ。キチガイバイオレンス「ジェヴォーダンの獣」を徹底した映像の美しさで一歩間違ったらバカそのものになる話を叙情感や郷愁すら感じさせるものに仕上げた手腕は相変わらず。個人的には、序盤のガソリンスタンドのシーンの映像に感動した。赤いコカコーラの自販機がきれいだなあと。なんてことのないシーンなのに。
映画としては女の子の幽霊だかなんだかよくわからないものに会って事件の真相を聞くまでは完全にゲーム感覚で物語は進む。友達がやっているバイオハザードを横から見ている時(難しくて自分ではできないので見てる方が面白いから)のような感覚におちいった。そのあととんでもない事態になって、画面がキチガイ地獄のような有様になるのも、途中まで史実に忠実で後半いきなり発狂映画になる「ジェヴォーダンの獣」と同じ手法。これはクリストフ・ガンズの持ち味だろうか。しかし女の子のお母さんが一人だけ生き残って「子供にとって母親は神だから」と言われても、幽霊だか残留思念だかわからない状態であんな異次元空間のようなところに一人だけ残されてもそれは困るのではないだろうか。
話は肝心なところが今一つはっきりしないし、登場人物の行動とか意味がわからない部分が多く(特に白バイを振り切るところ)、原作のゲームをまったく知らないので想像だが多分原作はこういう話ではないような気がするので、見る側の判断に任されるような部分が多いと思うが、これはあまり考えずに映像から伝わる叙情性や郷愁、その他もろもろのことを受け止めるのが正しい見方のような気がする。
あと思ったのは最近のこれ系の映画の場合子供のためにがんばるのはだいたい母親で、特にこれの場合実の子ではないので立場的には父も母も同格だと思うが、ラストシーンで一人残されたお父さんの姿があまりに寂しげで(映画の中ではお父さんもお母さんに負けないくらいがんばっていたのに)その姿には近年の映画でないがしろにされがちな父親の立場が象徴されていた気がする。時代の流れ的に、父の立場をあまり全面に押し出すことは旧時代的なマッチョ主義のアメリカを強調すると受け取られるから敬遠されているのかもしれない。
基本的には映像を見ているだけで時間を忘れるし、嫌な感じとふしぎな感動の両方が後に残る非常にいい映画だと思った。おれの好みの映画だ。あとエンディングの映像は無駄なまでにかっこよすぎる。
爆笑度 ☆☆☆
バイオレンス度 ☆☆☆☆
発狂度 ☆☆☆☆
怪奇度 ☆☆☆☆
男泣き度 ☆☆☆☆