SPL 狼よ静かに死ね

この映画おかしい。何かが狂っている。
中盤まで男泣きの要素がいやというほど詰められているので、これはとんでもない男泣き映画の大傑作かもしれないと思って男泣きの準備をしていたが、そもそも冒頭の自動車事故で頭にでかいガラスの破片が刺さった主人公の刑事が病院で「ケガはたいしたことありませんが悪性の脳腫瘍が見つかりました」と言われる時点でこの映画に対する疑惑がふと頭の中に浮かんだ。たいしたことないんだったら頭にガラスが刺さったところをあんなふうに映す意味は。
この映画には主に3人の主人公がいて、前述の刑事の他にその宿敵のギャングのボス、前述の刑事が退職するのでその後任として派遣された殺人犯を殴って脳に傷害を負わせたという過去を持つ刑事が登場する。各自、ギャングのボスは妻が流産して病院で悲嘆にくれているところを自分が殺させた裁判の証人の幼い娘に慰められるとか、後任の刑事は自分が殴って障害者にしてしまった殺人犯に週に一回格闘ゲームの相手をして負けてやることで償いをしているとか(冷静に考えたらそれが償いになっているのか疑問だが、まあなんか泣ける)男泣きポイントを持つがそれが映画の中で何の伏線とかにもなっていない。「こういう人です」というのを表現する手法だとしてもここまで描写しておいて映画の中で全く意味がないのはおかしい。異例だ。
そんな3人の戦いは最終的に空前絶後の空いた口がふさがらない壮絶な結末を迎えるが、それはできれば自分の目で確かめていただきたい。あえて見ようという人もそういないと思うが。悲しい場面のはずなのに笑いが止まらなくなることうけあいだ!つうか結局登場人物の大半が死ぬわけだが、この夢節操なまでの死にっぷりにはおまえ死にゃあいいってもんじゃねえだろ!と恫喝したくなる。特にラスト。悲しい場面のはずなのにあまりのなんだこりゃ感に茫然とするあまり変な笑いがどこからともなくこみあげてくる。
あとこの映画はアクションがキチガイじみていて、特に珍しいことにプロレス技を多用するので、やっぱりまじめな(はずの)映画にプロレス技はそぐわないなと思った。前半で3人がかりで(4人だっけ)ギャングのボスを逮捕するシーンでは、一人が下からの三角絞めでボスをとらえ、ボスが持ち上げて叩きつけたところを他の刑事がスクールボーイで丸め込み、そこにさらに他の刑事がフライング・ボディプレスを入れて逮捕するという映画史上に残る奇怪な逮捕劇を演じている。実戦でスクールボーイを使用する映画というのは初めて見た。これからも見ることはないと思うが。
変なもの見たい人にはおすすめ。ある程度この変さを変だと思うだけの素質は必要だが。普通は怒ると思う。映像的にはけっこうかっこいい。
爆笑度 ☆☆☆☆
バイオレンス度 ☆☆☆
発狂度 ☆☆☆☆☆
怪奇度 ☆☆☆☆
男泣き度 ☆☆
前から言っていることだがこの手のいかれた映画の場合、☆の数がやたら多くなるのは自分でも問題だと思う。